相続が行われた場合、相続の開始を知った翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告と納付を行なう必要があります。相続税が発生する場合には、10ヶ月の間に相続人間で合意をし、すべての手続きを滞りなく終わらせることが求められるのです。
その最初の話し合いを、四十九日の法要を利用して行ってみてはいかがでしょうか。この段階で弁護士にご相談いただければ、財産目録の作成や相続の対象者、遺言の有無などを調べることが可能です。ただし、弁護士が付いていることを表に出すと、警戒感を持たれる場合があるので、注意が必要となるでしょう。
相続人間で合意がなされれば、そのまま各手続きに移ります。話し合いがまとまらない場合は、弁護士が仲裁に入るほか、家庭裁判所による調停・審判の手続きを申し立てることも可能です。いずれにしても、10ヶ月後のゴールは決まっていますので、早い段階から計画的に分割協議を進めていく必要があるでしょう。
資産のなかには、遺産として分割対象になるものとならないものがあります。 また、不動産の場合、路線価と相続税評価額といったように、用いるモノサシによって資産額が変動することも考えられます。こうしたトラブルの火種をわかりやすく標準化し、誰もが納得できる分割案をお示しできるのが弁護士です。
また、遺言書の作成時においても、将来の争いにならないようなアドバイスをいたします。一般には、1つの財産項目に対して1人の相続人といったように、分割をせず可能な限り単純化していくのが、相続をスムーズに進めるコツといえるでしょう。
事例1
当所にて相続人調査、遺産の調査を行い、相続人となる兄弟姉妹に対して調査結果を提示した上で、兄弟姉妹には現金を分配し、自分は土地建物を取得する分割案を提示した。
ポイント兄弟姉妹が相続人となる場合、相続人が多数にわたる上、往々にして疎遠である場合があります。無用なトラブルを防ぐためにも、「正確な調査と事実に基づいた資料作り」が必要とされます。
事例2
未登記の建物を壊して土地を処分、その費用を財産から引いた上で、残額を分割した。
ポイント建物は、固定資産税を支払えば、登記がなくても「評価」が付いてしまいます。しかし、現実には「無価値」に等しかったことから、処分の合意を得ることができました。単に分割するのではなく、どのようにしたら相続を進められるのかという視点が求められたケースです。
相続には、3通りの方式があります。
一般的な相続方法です。プラスの遺産とマイナスの負債を区別せず、遺言や分割協議によって得られた合意に沿って、すべてを引き継ぎます。
被相続人からマイナスの負債を負った場合、引き継ぐ権利を放棄することができます。ただし、その存在を知った日から3ヶ月以内に手続きを開始する必要があります。仮に認められたとしても、プラスの遺産を一部でも受け取れば、相続放棄そのものが無効になってしまいます。
現段階で、プラスの遺産とマイナスの負債かの判別が難しい場合、プラスであることがわかった時点で相続を行う方法です。実際には、相続の存在を知った日から3ヶ月もあれば、プラス・マイナスが明確になっていることが多いので、用いられることが少ない方法といえるでしょう。
相続放棄で多いのは、負債の有無を知っていたかどうかを巡って、3ヶ月の期間遵守を争うケースです。例えば相続人と同居していた場合では、請求書や督促状などの郵便物が届いていることになりますので、「知らなかった」ことを立証するのは難しいといえるでしょう。弁護士であれば、このようなケースをふまえ、どのようなことに気をつけるべきかをアドバイスいたします。また、情状酌量の余地がある場合には、裁判所にその証拠を提出することで、3ヶ月の期間制限の回避を図ります。
事例1
被相続人の妹である奥さんに「相続放棄の事実を知らせていなかった」旨の陳述書を提出してもらい、相続放棄が認められた。
ポイント依頼者は相続の第3順位であったため、督促状が届くまで、事態の把握ができていなかったようです。負債の有無を知っていたかどうか、自分が相続人に当たることを知っていたかどうかは、あくまで本人の問題になりますので、相続放棄の期間は過ぎていないものとして、相続放棄が認められました。
事例2
相続放棄をして負債を免れつつ、生命保険金受け取りの手続きを行いました。
ポイント受取人が直接相続人名義に指定されている生命保険金は、税務上はともかく、法律上は「遺産」にはあたりませんので、相続放棄をしていても受け取ることができます。事前に弁護士に相談していただいたことで、負債の支払いを防ぐことができたケースです。
ともすると感情論に陥りがちな金銭の問題を、判例などの客観的な相場を示しながら、合意形成へと導きます。また、相続人が遠隔地にいる場合には、必要に応じて、代理人として出張し、細かな事情を説明いたします。認知症など意思表示ができない相続人に対しては、必要に応じて後見人を立てることも可能です。
関係者の間で合意がなされたら、「遺産分割協議書」を作成し、形に残しておくことが大切です。なぜなら、言った言わないのトラブルはよくあることですし、その後の生活環境の変化などによって合意が覆される危険性があるからです。特に、何らかの事情で等分されなかった場合には、その傾向が高まるようです。また、不動産は「遺産分割協議書」がないと、合意したとおりの登記をすることができません。言った言わないのトラブルを避けるためにも、争いの有無にかかわらず、書面に記しておくことをお勧めします。
話し合いによる合意が得られなかった場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立て、解決をゆだねることになります。調停では、調停委員から一般的な基準が示されますので、相手方の主張が相場から大きく離れているときなどには有効です。 一方審判では、裁判官が一刀両断に判決を下しますので、納得の上での解決とはならない可能性があります。経験上、合意なら3ヶ月程度で解決するのに対し、審判では年単位の時間を要します。 その間、相続人が亡くなったり新たに生じたりすると、さらに長期化する恐れもあるでしょう。
事例1
調停を申し立てて、裁判所からも意向確認をしていただきつつ交渉し、調停成立にこぎつけた。
ポイントこのような場合、審判に持ち込むことで解決を図ることもできますが、時間がかかる上に、思いどおりの解決になるとは限りません。直接交渉、調停で粘り強く交渉することが必要になります。
事例2
生産それ自体には使っていない土地など、農業にとって比較的重要度の低い土地を分割対象とし、手持ちの現金と合わせて折り合いを付けた。
ポイント「都会に住んでいるのに、土地を持っていても使えないのでは?」という素朴な疑問からスタートした事案です。弟側は現在の職業を続けられますが、兄側は生きる糧を奪われてしまいます。仕事や生活スタイルから平等を訴え、最終的に農業を維持することができました。
法定相続人に対し、一定割合の財産相続を認めた制度を「遺留分」といいます。この権利を主張する場合、相続の開始から1年以内に「遺留分減殺請求」をする必要があります。時効を止めるため、相手方に対し内容証明郵便を出すのが一般的です。
不動産や現金をそれぞれ分割する必要はありません。当事務所なら、各資産の使い道に着目し、もっとも合理的な解決方法をご提案します。最初から合意が得られそうにない場合は、あらかじめ調停を考慮に入れた進み方に切り替えます。仮に審判まで進んだとしても、事情や実質の価値を考慮した判決となることが多いようです。
何をもって生前贈与とするかは、明確な線引きがなく、非常に難しい問題です。仕送り程度であれば扶養の範囲に含まれますが、海外留学の費用負担などは、場合により生前贈与と見なされることもあります。 特別受益の立証は証拠が残っていないと難しく、「どのような生活を送っていたのか」という実情まで踏み込んだ調査を行っていく必要があるでしょう。仮に証拠があったとしても、判例と照らし合わせながら、随時判断することになります。
被相続人の介護など、生前に行った「特別な貢献」に対し、その対価を認めた制度を「寄与分」といいます。ただし、家族の一員として普通に面倒見ている以上の寄与でない限り、認められない傾向にあります。
事例1
奥様には現金をメインとした財産を残し、ご子息には会社の株式をそのまま相続させた。
ポイント株券を均等に分配すると、企業価値が下がってしまう恐れがあります。 また、奥様には老後の心配もあることから、現金の相続を主軸としました。これなら、奥様が被相続人になった場合でも、スムーズな手続きが行えます。
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